春に想われ 秋を愛した夏
翌日。
仕事が終わり、一度家に戻ってから春斗にメールを打った。
【 逢いに行ってもいい? 】
返信は、なかった。
けれど、私は春斗の仕事が終わる時刻を目指して、春斗の働く塾へと向かった。
塾の前に着くと、生徒たちを迎えに来た親たちが、塾の前に車を停めて待っていた。
何人もの生徒が親に迎えられて帰って行く。
しばらくして人の出入りがなくなっのを見計らい、私は思い切って塾の扉を押した。
「すみません」
遠慮がちに受付にいた女性に声をかけると、親御さんですか? と訊かれて苦笑いで首を振る。
「あの、はると……。澤井春斗さんは、いらっしゃいますか?」
「澤井先生ですか。本日は、こちらの塾ではなく、○○の方の塾へ行っていますが」
「そう……ですか」
居ると思って訪ねてきた相手にふられ、脱力してしまう。
受付の女性に会釈をして、肩を落としながら外に出た。
途方に暮れて歩き出そうとしたところで、春斗が少し先に立ってこちらを見ているのに気がついた。
「春斗……」
私の口から漏れ出た名前に、春斗が困ったような顔をした。