春に想われ 秋を愛した夏
「ねぇ、塔子。同棲ってどう思う?」
突然した私の質問に、いつもの居酒屋で塔子が目を丸くする。
「ん? 私に今、デジャビュが起こっているのは気のせいかな?」
以前と同じ質問を真顔でする私に、ビールのグラスを手に持ったままの塔子は首をかしげた。
「デジャビュではなくてね。今度は、私の話」
「え? あれ? 仲直りしたの? てか、ん? 二人どうなってんの?」
塔子が疑問を感じるのも、無理はないよね。
自分でも混乱していて、塔子にちゃんとした説明もなく毎日が過ぎていったのだから。
「あのね。この前、春斗が一緒に暮らそうって」
私は、春斗に逢いにいった時のことをかいつまんで説明した。
すると、うーん。と言ったっきり、塔子は考え込むようにして少しの間黙ってしまう。
頭の中を整理するように、何度か小さく頷いて渋い顔で手を組む塔子。
その姿を目の前で見ている私は、ちょっと不安になってきていた。
こんなどっちつかずでフラフラしている私のことを、塔子も見放してしまうかもしれない。
いい加減にしなって怒られても、何もいえないものね。
考えて溜息をつきそうになるのを飲み込んだ。
自分でまいた種に溜息なんて、無神経にもほどがある。