春に想われ 秋を愛した夏
しばらくすると。
「香夏子はさ、言われてなんて応えたの?」
「何も、言えなかった……」
突然のことに驚いてしまったのもある。
秋斗に好きだといわれて心がぶれているのを、春斗はどこかで感じ取っている気がする。
いや、きっと見透かしていたんじゃないかな。
だから、突然あんなことを言い出したのかもしれない……。
自分のことを見ていない恋人に気づいたら、腹を立ててもいいはずなのに。
春斗はそれを選ばず、そばにいることを選んでくれたのかも。
そこまで考えて、“束縛”という言葉が頭を掠めた。
―――― 裏を返せば不安だってこと ……。
私は、春斗をとても不安な気持ちにさせているんだね。
自分だけが苦しい思いをしている気になって、私、何やってんだろう。
今更ながらにうな垂れていると、塔子が口を開いた。
「それって、やっぱり、あ――――」
「違うよっ。秋斗の事は、関係ないから」
塔子の口から出そうな名前を、私は反射的に遮っていた。
「私、まだ最後まで言ってないよ」
先走っていい訳をした私を、悲しげに困ったような顔で見ている。
それから、うーん。と唸るようにまた考え込んでしまった。
「あのさ……」
「ん?」
「……あ、いや。うん」
何か、はっきりしない塔子。
「何?」
私はじらされて、気になってしまう。