春に想われ 秋を愛した夏


変顔にゲラゲラ笑っていると、真顔になった塔子が足を止めた。

「春斗君とは、昔みたいに会ってもいいんじゃないの?」

穏やかに勧める声に、つい少しだけ逢ってもいいかな。なんていう思いがわきあがる。

「そうだよね」

春斗には、秋斗との事は何の関係もないものね。

それは、わかっている。

だけど私は、春斗からの連絡さえもあの日から拒絶していた。
春斗と連絡をとってしまったら、秋斗に逢う確率が高くなる。
そんな気がして、つい春斗のことまで遠ざけてしまっていたんだ。

何も知らない春斗は、気を悪くしたままに違いない。
もう私のことなんて嫌っていて、顔も見たくないと思われているかもしれない。

気弱な私は、そんなことをいちいち考えてしまうんだ。

「考えとく」

塔子にそう笑顔で応えて、じゃあ、またね。と別れた。


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