春に想われ 秋を愛した夏
六月の拒絶
―――― 六月の拒絶 ――――
毎朝しっかりブローしている髪の毛が、今日に至っては決まりが悪い。
昨日のニュースでは、入梅宣言があった。
そのせいで、湿気を含み少し乱れた髪の毛が気になって仕方がない。
会社に着いてすぐ、ブラッシングして整えようとトイレにかけこみ鏡を覗き込む。
なのに、いつもポーチに入れていた折り畳みのブラシが見つからなくて、鏡の前で首をかしげていた。
見つからない苛立ちのせいと、シトシトと朝から降り始めた雨が、体中に張り付いている気がして鬱陶しさに表情が歪む。
昨日は確かにあったはずなのに、何処へやってしまったのだろう。
鏡の前で小さなポーチの中身を探っていると、ふいに昨日の記憶を思い出す。
ああ、そうだ。
昨日の帰り際に、今日はデートなんだ。と浮かれていたミサに貸したままだった。
別部署のミサの顔を思い出し、仕方なく手櫛で整えてみたけれど、どうにも納得できない。
就職祝いにもらってからずっとしているオメガの腕時計で時刻を確認してから、ポーチを手に取り急いでミサの元へ向かった。