春に想われ 秋を愛した夏


買った物をレジで清算したあと、春斗は深夜の一人歩きは危ないから。
と言ってマンションまで送ってくれるという。
しかも、野菜やお肉。
それと一番重いビールの入ったスーパーの袋まで持ってくれて。

「ありがとね」
「どういたしまして」

重い荷物を持たせていることに恐縮していると、変わらない優しい笑顔と言葉が返ってきた。

「春斗、全然変わってないね。相変わらず優しい」
「そうかな?」

私の言葉に、少し照れたような顔をしている。

「香夏子も変わってないよ。相変わらず、お酒好きで」
「もうっ」

怒ったように笑うと、春斗もケタケタと笑った。

この感じ、懐かしい。
前は、こんな風に他愛のないことにでもすぐに笑いあっていた。
なんだか昔に戻ったみたいで、凄く楽しい。

「いつからこの町に居るの?」

歩きながら背の高い春斗を少し見上げて訊ねると、僅かに目線を上に向けて考えるようにしてから応える。

昔から、春斗は何かを口にする前に少し考えるように上を向く癖があった。
それも変わっていないのが、何故だか嬉しかった。


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