春に想われ 秋を愛した夏
塔子の提案に渋っていた私だけれど、その後もあんまりにも会いたいと懐かしさを滲ませて言うものだから、しかたなく私は渋々春斗にメールを入れることにした。
「多分、仕事中だと思うよ」
「わっかんないじゃない。今日は、平日なんだし。丁度休みっていう可能性だってあるもの」
それもそうなんだけれど。
メールを入れてから、そんなことをグダグダと言い合っているうちに、春斗からの返信が来た。
それを見て、ドクンッと一つ心臓が跳ねる。
返信内容の書かれた画面を見せると、塔子がにやりと笑った。
私は、最悪のパターンを色々と想像してしまい、なんだか胃が痛くなってきた。
「ほぅらね」
得意気な塔子のいうとおり、春斗は今日休日だったようで、すぐ行く。という一言が簡潔に書かれていた。
春斗が来ると分かると、楽しみー。と塔子がはしゃぎだす。
そんな姿を見てしまうと、こっちも自然と心が浮き立ってくるのだけれど。
もしも万が一にでも、秋斗が一緒に現れたら、と想像すると落ち着きがなくなってもいく。
春斗が秋斗を誘う確立は、ゼロじゃない。
でも、今は塔子もいるし。
秋斗と二人っきりというわけでもないから、もしもそんな状況になったとしてもきっと大丈夫だよね。
なんとか不安を取り除きたくて、自分へ言い聞かせながらいると、しばらくして居酒屋のドアを遠慮がちに開ける春斗の姿が見えた。