春に想われ 秋を愛した夏


ひとしきり懐かしさに花を咲かせていると、塔子がさっき二人で話していたことを春斗に訊ねた。

「ねぇ。春斗君は、同棲ってどう思う?」
「同棲? 野上さん、同棲するんですか?」

「違う、違う。私じゃなくってね」
「えっ?! まさか、香夏子っ!?」

「それも違うから」

私は苦笑いをしながら、必要以上に驚いて勘違いをしている春斗の質問を否定した。

「なんだ。焦った……」

安心したような顔の春斗が、話の続きを促した。

「香夏子の同僚が同棲するか迷っているらしくって、男の春斗君からして同棲ってどんな気持ちでするのかな。と意見を訊いてみようかと」
「うーん。どんな気持ちか」

春斗は、僅かに視線を上に向け、少し考えてから口を開く。

「良くいえば、好きな子といつでも一緒に居たいからかな。例えば、同じテレビを見て一緒に笑ったり。同じ物を食べて、美味しいな。なんて顔を見合わせたり。同じ家から一緒に出かけられるのも、嬉しいかも。同じ空間に好きな人とずっと居られる幸せ、っていいよね」
「へぇ。春斗君て、可愛い考え方するのね」

塔子に、可愛いなんて言われて、春斗は酷く照れくさそうにしている。

「で、良くいわなかった場合はどうなの?」

春斗は、塔子の質問に一言で応えた。

「束縛」
「束縛……」

あまりにも完結に言われた一言に、私と塔子は声をそろえて復唱してしまう。


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