春に想われ 秋を愛した夏
七月の暑さの中、煌々と灯る明かりに導かれて店内に入ると、エアコンが効いていてとても涼しかった。
お客は、雑誌を立ち読みしている人が二人ほど居るだけで、店員さんは暇そうにしている。
真っ直ぐ奥の冷蔵庫へ向かい、籠に缶ビールを入れて行く。
「塔子、あとどのくらい飲むんだろう?」
独り言を呟きながら、三五〇mlの缶を一〇缶籠に入れた。
重っ……。
持ち上げた籠の重さに息をつき、籠を持ったときに傷口に痛みが走り顔を歪ませた。
支払を済ませ、袋を二つに分けてもらいコンビニを出る。
塔子のマンションへ戻るために歩き出すと、背後になんとなく視線を感じて振り返る。
すると、三〇メートルほど先に人影が見えて、私は目を凝らしてみた。
そこには、二度目の偶然があった。
歩いて五分とない距離で起こった、これが不運なのかもしれない。
「……あき……と」
秋斗は、立ったまま身動きもせず、こちらをただじっと見ている。
近づいてくるわけでも、声をかけてくるわけでもない。
ただそこにじっと佇む秋斗を、私も同じようにして見ていた。
春斗が秋斗も近くに住んでいると言っていたけれど、こんなに近所で逢うんて。
会社で逢った時にとった秋斗への態度と、過去の出来事が胸の奥底を疼かせて、私の心臓は異様な鼓動を刻んでいた。