春に想われ 秋を愛した夏
言葉を飲み込んでしたまった私を、春斗が根気良く待っている。
「ごめん。なんでもない」
首を振り、食事の後片付けをしようと春斗の居るキッチンへ行く。
けれど、私が買い物へ行っている間に春斗が片付けてくれたのか、キッチン周りは全て綺麗になっていた。
「後片付け、してくれたの?」
「ああ、うん。野上さんも寝ちゃったからね」
肩を竦めて笑う。
「ありがと。いいお嫁さんになるね」
からかうように春斗へお礼をいうと、貰ってくれる? なんて冗談を返された。
肩をすくめて笑い返してから、未だスヤスヤとソファの上で眠り込んでいる塔子をキッチンから覗き込む。
「ベッドに移してあげたほうがいいかな?」
春斗が気を遣う。
「大丈夫でしょ。タオルケットだけかけてあげればいいよ」
気遣う春斗に言って、ベッドルームへ行きタオルケットをはいでくる。
「エアコンは、緩めにしておこっか」
風邪でもひいたらかわいそうだ。
塔子にタオルケットをかけ、エアコンの設定温度を変えてから、私たちは塔子のマンションを後にした。