春に想われ 秋を愛した夏


「少し休んでから戻った方がいいぞ。あと、ちゃんと飯も食った方がいい」

秋斗が話しかけてきても黙っていると、どうせ何も食ってないんだろ。と解ったような口調で言われて悔しくなってきた。

それが図星だからか、秋斗という相手に言われたからなのか、兎に角自然と不満な顔をしてしまう。
そんな風に子供みたいにすぐに表情に出してしまう私のことを、秋斗が笑って見ている。

「ガキかよ。そういうの、かわんねぇな」

ククッと少し声を上げると、目の前の椅子に腰掛けた。

「何で、座るの」

ドリンクを貰ったというのに、いつまでそこに居るつもり? と無碍な態度にでると、心配だから。と背もたれに寄りかかる。

「歩けるようになるまで居てやるよ」
「居てやるって……」

何、その上目線。

「なんなら、上のフロアまで、肩貸してやろうか?」

本気なのか冗談なのか。
椅子から立ち上がり、私のそばに来て右手を差し出してきた。

「余計なお世話」

冷たく言って差し出された手をすり抜けるように椅子から立ち上がると、まだ戻らない調子の悪さにクラリと来てしまう。
瞬時に秋斗が手を伸ばし、私のことを抱きとめた。

「や、やめてよっ……」

支えてもらったというのに反発心が溢れ出し、慌ててその手を払い除ける。

「もう、……平気だから」

優しくしてもらっていることが苦しくて、秋斗の手を自ら遠ざけ冷たく接しているというのに、怒らせているかもしれないとビクビクしてしまう。


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