ハジメテノキモチ【短篇】
「上手いんだけどねえ……」
読み終えた原稿の束を揃えて、机のうえでトン、ともう一度揃えながら上条さんは「う~ん」と唸りながら首を傾げた。
もう何度も持ちこみを繰り返している。
出版社の人は厳しい意見を言うばかりで中々書いたものもまともには読んでくれないのでは?という疑念を持ちつつも……
見て欲しいという気持ちが先立ち、初めて自分が書いた小説をの持ちこみしたのは三年前。
その時僕の前に現れた上条さんは、最初に抱いていた疑念とは全然違いとても丁寧に原稿を受け取ってくれて。
読み終えたからと連絡をもらって出版社に再び出向いた僕に、笑顔と共に第一声
「面白いの書くねえ」
そう言ってくれた。
そのうえで、その時点の僕に足りないものを僕自身が考えやすいようにいろいろアドバイスをくれたのだ。
それ以来、何度も書いては持ちこむ僕に、ずっと根気強く付き合ってくれている。