ハジメテノキモチ【短篇】
――あれから三年
自分でも随分上手くなったと思う。
今度の作品は我ながらかなりの自信作に仕上がっていて、近々開かれるコンテストに応募しようと思っていた。
「……何か……気になるとこありますか?」
尋ねた僕に、上条さんは
「うん……文章自体はすごく安定してて問題ないし、話も練れてるんだけどねえ……後少し、なんだろう?」
そこでもう一度首をひねり
「そうだな……なんだかパワーが足らないんだよなあ」
そう言って苦笑した。
自分では正直、そこんじょそこらに売ってる小説なんかよりずっと出来がいいと思っていただけに、僕はわけがわからず茫然とした。
文章、ストーリー共に良し。
足りないのがパワー?
「あいまいな言い方で悪いんだけどね。
そうだなあ……君は確かに随分上手くなったんだけど、どうも最近読ませてもらったのよりね、最初に持ってきたやつ。
アレの方が読んでてずっと楽しかったような気がするなあ」