いいわけ
好きな人の言動で、あたしの気分は浮いたり沈んだり忙しい。でもそれが片思いの楽しさであり辛さでもある。あたしはそんなのも悪くないな、と思った。
「そーいや昨日はあんなことあったよね!もー本当噴き出しそうになったよ!」
加奈たちも会話に入ってきて盛り上がる。しかし加奈が啓太にバレないようにあたしの方を細い目で見てくるから、あたしの心臓はひとりでにバクバクしだす。
早くアドレス聞かないと!と、焦れば焦るほど声は詰まり、多分目は血走る位の勢いだったと思う。
アドレスは知りたい。なのに声が出ない。昼休みもあと少しで終わっちゃうと言うのに、一向に踏ん切りがつかないままだった。
あたしは話しながらもチラチラと加奈を困った顔で見る。加奈はしょうがないな、という顔で小さな溜め息を1つ吐いた。
「ねえ啓太、アドレス教えてよ。同じ部活なんだから、知ってた方が何かといいでしょ?」
「あー…そうだな」
加奈はまたあたしをチラッと見る。その目には明らかに早く言え!と書いてある。
そう、そうだよ。同じ部活同士気軽にあたしも!って言えばいいんだよね。……ああっ!でもその一言が言えない!でも……