いいわけ
「ね、ねえ、彼女はどこに住んでるの?」
啓太の顔は薄暗くてよく見えなかった。だからあたしの顔も分からないだろう。この染まる頬も、切ない表情も。
啓太の一言で一喜一憂するあたしの気持ちも。
「あー…、こことは違うでっかい街。頭良いトコに通ってる」
「へえー!頭いいだなんて羨ましいなあ!」
……ごめん。羨ましいのはそれだけじゃないよ。彼女という位置も、啓太との過去も、全部あたしには無いもの。
努力しても決して届かないもの。
「けどあいつも忙しいみたいでさ。なかなか連絡もとってねーんだ」
あたしは下を向く。今の啓太の顔は見たくなかった。
きっと寂しい顔してると思うから。頭の中では、彼女のことを考えてると思うから。
啓太の隣りにいること、2人で話してることに罪悪感はある。それでもあまり連絡もしていないという話を聞くと、あたしはまた希望を見いだしてしまうんだ。