宿った命


ラックは気配を感じた。

はっと息をのんで屋上のドアを見つめる。


〈リーフ・・・?〉


リーフの、相棒の魔力を感じ取る。


ラックは一度紗季を見た。
相変わらず紗季はフェンスに寄りかかり、つまらなそうに地面を見つめていた。


〈紗季。また会いに来るから。ちょっと離れるからね〉


返事をしない紗季に笑いかけると、ラックは屋上を出た。


来る時には気付かなかった、立ち入り禁止の札を見つける。
だから、誰も来ないのだろうか。ラックはそう思った。

顔をあげると、また強い気配を感じた。


上から階段を見下ろすと、一部だけ特別に明るかった。


きっとリーフだ。リーフが魔法を使ったんだ・・・。


〈リーフ!?リーフ!!〉


何かの発見があって魔法を使ったのか、そう思うと嬉しくて、ラックは階段を駆け降りた。


そんな時だった。




〈我の意志に応えて消滅せよ!〉




リーフの声がして、ラックは足を止めた先を見た。


「お前・・・本当に・・・?」


〈最初からそう言ってるだろ〉


相手は今朝のあいつ。“しゅうへい”だろう。


ゆっくりと歩くと、ラックの耳に入る声が大きくなった。


「じゃあ、ラックの方も・・・」


〈ああ。だけどあいつは・・・誰よりも強い魔力を持つ使者なんだ〉


〈え・・・?〉


ラックは足を止めた。
多分、この角の先に2人はいるはず。

だけど、その場に駆け寄ることは出来なかった。

気持ちの整理がつかない。



強い魔力?そんなはずはない。



ラックの頭の中にはただそれだけが残っていた。



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