宿った命
修平は死んでから、不思議な空間を彷徨っていたらしかった。
光に包まれて、とてつもないスピードで飛ぶ感覚を経験していた。
この世に生まれてから今までの出来事をすごい速さで見てきたという。
そうして、最後。
大きな門の前に立っていると、どこからか声がしたらしい。
懐かしの、その声が・・・。
―行かないで・・・―
目が覚めた時にはここにいた。
修平はすぐに紗季に会いに行こうとしたが、
どんなに歩いてもなかなか先に進めなかった。
バス通学の紗季には朝と夕方、必ずここで会うことが出来ると修平は待った。
ずっと、待っていた。
それでも、バスの中から紗季が降りて来ることも、
向こうから紗季が来て、このバス停で待つ姿も、見つけることは出来なかった。
〈じゃあ・・・。修平はここで死んだから、ここから離れられないってことか〉
リーフは話を整理して言った。
そしてリーフは思った。
それでは、紗季をここに連れてくるしか2人が会える方法がないじゃないか・・・。
無理だ。
今の紗季は、事故のショックで記憶を失っているのだ。
通学はこの道を避けて、別な場所を通っているらしい。
リーフはそれを修平に教えることが出来なかった。
2人の結末が、余りにも残酷すぎて・・・。
『1度でいいから会いたいんだ。紗季の元気な顔が見られればそれでいい』
〈でも、これじゃあ会いに行くことは―〉
〈出来るわ〉
『え・・・?』
〈お前・・・っ!?〉
第3者の声に、2人は驚きの声を上げ、声のするほうを振り返った。