宿った命


“魂の定着”。

ラックはイリアに向かってそういった。


≪そんなの有り得ないわ。できるはずない≫


≪大丈夫。目を閉じて。次に目を開けたとき、君は生まれ変われる≫


イリアは半ば半信半疑でラックを見つめ、ゆっくりと目を閉じた。


そうすると意識は薄れ、深い眠りに落ちていくのが分る。


遠くなる意識の中、ラックが何かを唱えているのが聞こえ・・・―。


〈気付いたら、この体を手に入れていた。
 いくら魔法を使っても、簡単には倒れないような、元気な体を〉


〈そんな・・・。まさか、ラックが“定着”まで出来るなんて・・・〉


『ちょい待て。“てーちゃく”ってそんなにすごいのか?それやったら俺も生き返るって
 こと?』


〈“生き返り”なんてこの世界に存在しないわ。
 いくら人間でもそれくらいは分るでしょ?
 私はあの時、まだ“死んで”なかった。
 

 だけど修平。あなたはもう“死んでるの。
 “定着”は出来るけど、生き物には定着することは出来ない。
 人間は勿論、犬や猫、
 

 鳥なんかの命あるものにはなれない〉



イリアが修平を諭すように説明した。



< 31 / 63 >

この作品をシェア

pagetop