宿った命
『だから・・・。俺にチャンスをくれよ。少しでいいから・・・』
〈修平・・・。修平も、紗季と同じなんだ・・・〉
ラックは聞こえないくらい小さい声で呟いた。
〈ラック。私。イリアよ。覚えてる?〉
イリアがラックと修平の間に立った。
ラックは怯えたような表情をしたが、すぐにイリアに気付いた様子だった。
〈あ・・・〉
〈覚えていてくれてありがとう。私に魂の定着をしてくれたよね?〉
〈あれは・・・〉
〈だから、今回もきっと成功するわ。人間のお願いを叶えてあげるんでしょ?
人間と妖精が共存できるような世界を目指すんでしょう?〉
〈イリア・・・〉
ラックはしばらく考えるように目を閉じた。
リーフとイリア、そして修平がじっとラックの言葉を待った。
空は不安げな曇り空。風は凍てつくような寒さを運んできていた。
ラックがゆっくりと目を開ける。
修平はそんなラックを強く見つめた。
青い瞳がゆらゆらと揺れる。
それでもその瞳には決意の眼差しが感じられた。
〈・・・傷つけたら、俺が修平の記憶を消してやるからな〉
いつものラックとは違い、真剣な表情でそんなことを言う。
修平の顔には次第に笑顔が溢れ、
気付いたときにはラックの頭をわしゃわしゃと撫でていた。