宿った命
どうしてもっと早く伝えられなかったんだろう。
こんなことになるなら、素直に好きだと伝えればよかったのに。
紗季はそう思うと溢れる涙を抑えられなかった。
カタン、と物音がして、紗季は顔をあげた。
「雪・・・」
窓の外に映っていたのは、雨ではなく、
白く降りしきる雪だった。
紗季は震える足を引きずって、再び屋上へとあがった。
重い扉を開けると、白い景色が目の前に広がった。
紗季は屋上の真ん中までいくと、空を見上げて目を瞑った。
「修平だ・・・。修平がいる・・・」
―傍にいるから―
修平の声が耳の奥で響く。
紗季の涙はいつの間にか止まっていた。
修平が、どこかで見てくれているんだろうか。
紗季は不思議と寂しくなかった。
修平の最後の温もりと、優しい言葉を信じているから。
「修平・・・。守ってくれてありがとう・・・」
紗季の小さな声は、静かに雪の中へと消えていった。