宿った命
Special Edition
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*
全てを茜色に染める夕焼け。
校舎から騒々しさが消え、
静寂に包まれた頃。
俺は廊下を歩いていた。
普段は何気なく通る廊下も、
なんとなく歩いたことのない道に見えた。
高校1年の秋。
もうすぐで、冬が来る。
中学の頃とは違い、毎日の日々も足早に過ぎていく。
そんなふうになんとなく寂しさを覚えると、
無意識に教室の前まで到着していた。
「紗季・・・?」
窓側の一番後ろ。
一つだけ他の列からあぶれて並ぶ席に
ちょこんと座る紗季がいた。
オレンジに反射して輝くピアスが
その存在感を強調させる耳にはイヤホン。
俺がふいに呼んでしまったのも、
紗季には聞こえていないようだった。
ふっと静かに笑った俺は、
ゆっくりと歩いて紗季の隣に座る。
それでも気付かず、
ただじっと窓の外を見る紗季を見て、
情けないけど、少しムッとした。
俺に気付かないとか、ありえねぇ・・・。
びっくりさせようと思って
後ろから驚かせようとしたけど、やめた。
オレンジに染まる紗季が、とても愛おしく思えたから。