空色バルコニー
作戦は開始された
1

ゴミ箱は紙でいっぱい。
手が痛い。書き直すのは何回目だろうか。

25回目にやっと書けた。

***

前略

こんにちわ。
僕は向かいに住む小谷晶太です。

いきなりの手紙ですみません。

友達になってください。


追記

僕は変態ではありませんし、ストーカーでもありません。人畜無害です。


***


封筒に入れてのりをつけた。
さて、あとはどう渡すかだ。
相手の苗字も知らない。
よってポストに投函することはできない。どうする?

1時間後、僕は虫取り網と格闘していた。彼女の窓にある落下防止の柵に手紙を置くことにしたのだ。
虫取り網だけでは距離が足らず、父のゴルフクラブをガムテープでつなげた。

おっかねえ。やっぱりおれはビビリだ。
手紙を置いたらもう後には引けない。
深呼吸をすると、網に手紙を入れた。
バルコニーに立ち、網を出し、向かいの窓の柵の上で網をひっくり返した。手紙は無事に柵に乗った。

さいは投げられた。
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