空色バルコニー
3

風呂に入り湯船につかった。窓の外でジジっと散発的にセミが鳴いた。

数十秒、せいぜい1分。たったそれだけで、あの子はべたりと僕の脳裏に焼きつき、消えそうもなかった。

一目惚れ?まさか、こんな簡単に恋に落ちてゆくとは考えられない。
僕は密かに恋のルールをつくっていた。


1
相手の性格をよく知ること。

2
健康的な女性であること。

3
僕をこき使わないこと。

4
敬愛する手塚治虫を一緒に読めること。

5
髪は黒髪に限る。(これ一番大事。ポニーテール、ボブなら尚可とする)


と、まあこんな具合。
黒髪は合ってるな。
しかし、他の項目は依然謎のままだ。

彼女の名前は?
誕生日は?
好きなものは?

考えるのはよそう。そんな簡単に人を好きになんてなるわけない。きっとびっくりしただけなんだ。

ぶくぶくと、バスタブに顔を沈めた。
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