【完】『遠き都へ』
河原町四条のホテルに忍や聖と泊まった翌日、東京へ戻る忍と聖を見送ったあと、梅田まで出た理一郎とセイラは、高速バスで高知を目指した。
手には茶筒のような小さな骨箱がある。
「…人間って小さいよなぁ」
思えば、動くとカサカサと音のするこの小箱と、その主のために、振り回され続けている状況に、
「いったい何なんだろ」
とだけ、理一郎はボソッと吐いた。
「東京からだと、飛行機ですぐなんだけどなぁ」
意外に四国は遠い。
このあと瀬戸大橋を渡り、川之江から峠を越え土佐へ入るという旅程で、だいたい五時間ばかりかかる。
が。
未知の旅にセイラは、まるで遠足でも行くかのような楽しげな様相で、鼻唄まじりで笑顔をはじけさせていた。
「あたしね、修学旅行とか行ったことないんだ」
どうやらアメリカで彼女がかよっていた学校には、そうした行事が皆無であったらしい。
ともあれ。
出発して千里のニュータウンから西宮へ入る頃には、はしゃぎ疲れたのかセイラは幼子のようにすやすやと眠ってしまっていた。
(自分にはない天真爛漫さだよなぁ)
そういう明るさが、理一郎には果てしなく眩しく感じられた。