【短編】さくらいろ。
さくらいろ。
真っ暗だった。
ここはどこだろう?
たしかめようにも時間も光も音も温度も何もない。
そんな風に感じる。
ただ私は歩いていた。
導かれるように、ただ。
やがてぼんやりとした明かりが見え、それが映写機の映し出す光だと気づく。
壁に映し出されたそれは、闇を四角く白く切り取って窓のように見える。
私はふと椅子の存在に気付き、そこへと腰を下ろした。
──さあ、始めましょうか。橋崎かおりさん。
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