【短編】さくらいろ。
……ああ、私、わかったよ。
やり直したい瞬間がわかったよ。
その瞬間まで巻き戻る間、映像は冬から秋へ。
そう、よく公園にでかけたね。
そして夏、今年の夏は暑くて、私たちはよく市民プールに行った。
夏から春へ、そうだ、ごめんね。この桜、来年も見ようって約束したのに。
でもね、でもね……。
私は停止ボタンに指を置いてスタンバイをした。
さあ、この時、この場所へ戻ろう。
ボタンを押したという感覚と同時に世界は眩い光の中に吸い込まれ、私は目を閉じた。