【短編】さくらいろ。
突然背後から聞こえた声に驚いて、吸い込もうとした空気は気道をうまく通れずに喉を塞ぐ。
「大丈夫?どうしたの?こんなとこで」
「え?ううん、なんでもない。そ、そう、桜、この桜を見てたの」
そう、と短く言って微笑むあなたはいつものあなたの優しい笑顔で、私は泣いてしまいそうだった。
こんなに好き。
こんなに好きだから、今度は言わないよ。
優しいあなたは私の告白を断らずに付き合ってくれて、私を大事にしてくれた。
私はとても幸せだったんだよ。
絶対世界で一番幸せだったから、せめてものありがとうを今伝えたい。