嘘つきな彼に嘘つきの歌を


小さい頃は、言われた通りに動いていた。まるで操り人形みたい、って悩んだり泣いたりもした。
でもそれは、今となっては昔のこと。もう私はそんなこと気にしない。
だってこれは、私自身が選んだことなのだから。


大抵の生徒が、眠くなると言う数学の授業。
今日のような天気を、きっと五月晴れというのだろう。
まだお昼前だったが、5月の日差しの中でうとうととしている人もいる。

「ではこの問題を……桜宮さん」

教壇に立ってこちらを見ている教師と一瞬目を合わせ、小さすぎない声で返事をする。
少し恥ずかしげに下を向いてから、今度はしっかりとした声で答えた。

「0,258です」

「正解です。これは少し応用的な考えを使うので、覚えておくように」

当たったことを喜ぶようにはにかんで、ずっとこちらを見ている亜依さんと目を合わせる。
亜依さんがガッツポーズをするので、私も小さくガッツポーズをして応えた。


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