あなたをもっと好きになる。


パーンと乾いた音が教室に響いた。

それはもちろん、木下先生が沢田くんの頭をあの丸めた教科書で叩いた音だ。

さすがに飛び起きた沢田くんは、木下先生を睨み付けた。


「ってーな。」

「寝てねーで、さっさと教科書出せ、問題やれ。」

「暴力教師。訴えるぞ。」

「そんな暇があったら問題の1問でも解け。」


サッカー部員の沢田くんと、一応サッカー部の顧問を受け持っているらしい木下先生。

そんな二人のやり取りは、もはや漫才化している。

なんだかんだ気を許しあっている二人だから、先生も沢田くんの頭を叩けるのだろう。

きっと、いや絶対、普通の生徒にはそんなことできない。

……私にしたみたいな、注意を引くようなぽんってやつはあるかもしれないけれど。

< 10 / 54 >

この作品をシェア

pagetop