あなたをもっと好きになる。
パーンと乾いた音が教室に響いた。
それはもちろん、木下先生が沢田くんの頭をあの丸めた教科書で叩いた音だ。
さすがに飛び起きた沢田くんは、木下先生を睨み付けた。
「ってーな。」
「寝てねーで、さっさと教科書出せ、問題やれ。」
「暴力教師。訴えるぞ。」
「そんな暇があったら問題の1問でも解け。」
サッカー部員の沢田くんと、一応サッカー部の顧問を受け持っているらしい木下先生。
そんな二人のやり取りは、もはや漫才化している。
なんだかんだ気を許しあっている二人だから、先生も沢田くんの頭を叩けるのだろう。
きっと、いや絶対、普通の生徒にはそんなことできない。
……私にしたみたいな、注意を引くようなぽんってやつはあるかもしれないけれど。