あなたをもっと好きになる。
そして黒板の前の彼はまた、何事もなかったように、教室の前のほうに座る生徒を見た。
「号令。」
「きりーつ、」
ガタガタというイスから立ち上がる音とともに、始業のベルが鳴った。
「れい」
「「おねがいしまーす」」
「はい、お願いします」
決まりきった形だけのような挨拶をすませ、彼は最前列の教卓の前の席───いわゆるセンター席の吉田くんにたずねた。
「この前どこまでやったっけ?」
「××ページの例題までです。」
「そっか。俺次の問題宿題にした?」
「してないです。」