あなたをもっと好きになる。


りょーかいと呟いた彼は、教室を一通り見渡し、例題の次にある練習問題を各自解くように指令を出した。


「少ししたら黒板にヒントかきます。わかんなかったら回るからそのときに聞くように。」


がさごそとシャーペンなり消しゴムなりを取り出す音がして、教室は静かになる。

そろっと斜め前に視線を向けてみると、案の定、沢田くんは机に突っ伏したまま。

なんとか号令のときは立って挨拶してたんだけどな、やっぱりだめか。


もう見慣れたこの光景。

沢田くんは授業中に寝ていることが多い。

それでも定期テストではいつも上位にいるっていう…なんとも不思議な人。

やらなくてもできるって、やってもできない私にとっては妬ましいほかにない。

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