*ビビッドDAYS!*
おつりを受け取った彼が反対の手に持っているのは、ニョッキリという細長いプレッツェルのお菓子だった。
わたしの言葉に、結城くんは未開封のニョッキリをじっと見つめてから、おもむろに差し出してくる。
「え……?」
無言のまま、真っ黒なその瞳をわたしに向けた。
「くれる、の?」
こくんと頷くと、箱をわたしに押し付けるようにして、結城くんはさっと身体を反転させた。
そのままスタスタと歩いていってしまう。
その背中は、薄暗い廊下にあっという間に溶けそうなほど細く見える。
モデルの件、まだ返事をもらっていないけれど、なんとなく追いかけることができず、
遠ざかっていく背中をじっと見送ってしまった。