*ビビッドDAYS!*
わたしはお父さんのお下がりのこれを首から提げて、
いつでもどこでも気になるものがあれば即のぞきこむのがクセだった。
そう、いつでもどこでも即座に。
「おおっと隊長! 赤富士が見えるであります!」
「なんですって? 晩夏から秋にかけての早朝にしか見れないはずの赤富士がこんなところから――って、人のニキビを拡大してんじゃないわよぉぉぉ」
バカ志摩、とアキちゃんが投げつけてきた消しゴムをひらりとかわす。
「へっへーん冗談だっぴーん。双眼鏡ほど拡大しては見えな――」
言いながらオペラグラスを顔から離した瞬間、背筋がぞくりと震える。
「志摩ぁぁぁ!」
野太い咆哮が背後に迫り、咄嗟に身を屈めると、
すぐ頭上を筋肉質な腕が通り抜けた。