Dear:大切な君へ。

「あぁ。もういろんな泣ける話が載ってる本でさ。あれは電車ん中やバスで見るもんじゃねぇよ」




こんな時、自分の口からすらすらとウソが出てくることに感謝する。




「へー。健ちゃんがそんなに泣くくらいだから、相当感動する話なんだ。って言っても、健ちゃんは泣き虫だったね」




また、力なく笑いながら夕美は言う。




そして。




「外出、だめになっちゃった」




手の甲を目に当て、口元は笑いながら呟く。




「・・・・・あぁ」




「ごめんね、健ちゃん。せっかく、出かけようって約束したのに・・・・・」




ツー、っと手の甲で隠された夕美の目から涙が流れ落ちる。




「んなの、治ればいつでも行けんじゃねぇか」




その俺の言葉に、何度もうなずく夕美。




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