Dear:大切な君へ。
それから数日後、夕美の顔の痣もなくなってきた頃だった。
「けんちゃん………」
部活が終わって帰り支度をしている時、後ろから小さな声で呼ばれた。
振り返った先には、夕美の姿。
「どうした?」
そう尋ねると、ハッとした表情になり、
「あ、ごめん!なんだったっけ。忘れちゃった!」
と言って取り繕うように笑った。
「………そっか」
その頃は、夕美が何か言ってくるまで無理に聞こうとは思わなかった。
だけど、この時何がなんでも痣の理由を聞いとけばよかったと俺は後悔する。