月夜の桜

大樹が記憶をなくしてから、もう一ヶ月…。
何も進歩がないまま、二人の時間はあっという間に過ぎてしまった。
確かに一緒にいる時間は増えたけど、私は元の大樹に戻ってほしい…。
前のような、明るくてやさしい笑顔がまた見たい。

大樹もやっと、夜の魘されがなくなった。
しかし、大樹はいつも何かを考えている様子…。
私に話せない内容なのかなと、私は正直不安でいっぱいだった。

私は、そんな気持ちを持ちながら大樹に聞いて見た。

静香「ねぇ大樹…。いつも何か考えているようだけど、私に話してくれないかな?」

大樹「いつも、俺の頭の中に、かすかに浮かんでくる景色があるんだ。」

静香「景色?その景色って、大樹にとって何か大切なもの?」

大樹「そうなのかもしれない…。でも、後少しっていうところで見失うんだ…。」

静香「一緒に探してみようよ。何かわかるかもしれないから。」

大樹「ありがとう静香。」

こうして、私達は大樹の記憶の断片探しが始まった。
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