隣の仲介屋
隣の仲介屋
先輩
「弥殊!」
いつもの通学路。
あたしはバス停に向かってる途中。
晋ちゃんは今日も元気に自転車通学。
晋ちゃんの赤い自転車は去年の誕プレ。
おばさんに聞かれてあたしが提案した。
「中谷のこと考えてくれた?」
晋ちゃんが自転車を減速して、あたしの歩調にあわせる。
「あたし先輩と別れたばっかりなんですけど〜」
あたしが言うと、晋ちゃんは笑う。
「みーは性格良いから悪い事言う奴はいねぇよ」
晋ちゃんはいつもそう言って、あたしに男を紹介してくる。
自分は彼女なんて作んないくせに。
俺はバスケが恋人だって誤魔化して。
「まぁ、もう少し考えてみてよ。中谷良い奴だし」
晋ちゃんはそう言うと、手を振って自転車を加速する。
赤い自転車は見る見るうちに小さくなって、しまいには見えなくなった。