隣の仲介屋
ゆっくり倉庫に入る。
「弥殊か?」
暗やみの中、聞こえたのは晋ちゃんの声。
つまり。
羽月の好きなのは、晋ちゃん。
全然気付かなかった。
羽月の気持ちも。
晋ちゃんに好きな子がいることも。
「ねぇ晋ちゃん」
ボールケースを捜しながら晋ちゃんに話し掛ける。
「晋ちゃんの好きな子って誰?」
晋ちゃんは少し間を空けて答える。
「聞いてなかったの?さっきの会話」
「え?うん」
あたしの答えを聞いて晋ちゃんは立ち上がる。
「ごめん、内緒」
晋ちゃんにも好きな子がいる。
皆ちゃんと誰かを想ってるのに。
あたしは何をしてるんだろう。