隣の仲介屋
「晋ちゃん」
窓越しに晋ちゃんに呼び掛ける。
エアコンのない晋ちゃんの部屋はいつも窓が開いている。
「どしたの?」
晋ちゃんがベッドから起き上がって窓から覗く。
「晋ちゃんの好きな人、どうしても内緒?」
あたしの言葉に、晋ちゃんは笑顔で返す。
「だめ」
晋ちゃんの好きな人ってどんな子?
昼間からずっと気になってる。
物心ついたときからのお隣さん。
いつも二人で庭で遊んでた。
バスケを一から教えてもらった。
いっぱいいっぱい男の子を紹介してくれた。
そんな晋ちゃんの好きな人って誰?
「晋ちゃん」
あたしは改めて晋ちゃんを呼ぶ。
晋ちゃんはあたしを見る。
「陽と別れちゃった」
予想どおり目を丸くして。
晋ちゃんは聞く。
「何で?」
あたしは答える。
「もう中途半端は辞めるんだ。皆…晋ちゃん達みたいにちゃんと恋愛する」
「そっか…頑張れよ」
晋ちゃんが笑って言う。
何をするって言っても。
いつも晋ちゃんはあたしを応援してくれる。
「晋ちゃんもね」