隣の仲介屋
最後の仲介
どれくらい泣いただろうか。
涙が枯れて、立ち上がろうと試みる。
足首が腫れあがって、上手く歩けない。
また涙が零れそうになる。
「やっと見つけた」
声の方を見ると、息を切らした晋ちゃん。
晋ちゃんは笑って、携帯を開く。
「もしもし?海陸です。今見つかりました…はい。じゃぁ皆は先に休ましててください。はい、大丈夫です」
電話を切ると、晋ちゃんはあたしの荷物を受け取る。
「携帯は持ち歩けよな?」
晋ちゃんは笑ってあたしの頭に手を置く。
当たり前の存在が、特別な存在で。
あたしを見つけてくれたのが嬉しくて。
あたしは泣きながら笑った。
「ありがと、晋ちゃん」
晋ちゃんはいつものように笑って言う。
「玉葱なしのカレーは不味かったなぁ」
玉葱のはいったスーパー袋を持ち上げて。
「弥殊のいないバスケ部も締まらなかったなぁ」
にこっと八重歯を見せて笑う。
晋ちゃんの馬鹿。
あたしがそーゆうのに弱いの知ってるくせに。
あたしの顔を覗き込んで。
やさしく笑う。
「ゆっくり帰ろうか」