隣の仲介屋
中谷陽
コンコンと、窓を叩く音がする。
あたしはカーテンを開けて、窓を開ける。
そこには窓から乗り出して、長い棒で窓を叩いていた晋ちゃんがいる。
「今日中谷と喋ったんだって?イイ奴でしょ?」
晋ちゃんが笑顔で聞いてくる。
「うん、いい人だったよ」
あたしが答えると、晋ちゃんは目を輝かして言う。
「じゃぁ付き合う?」
あたしは少し考えて、首を縦に振った。
「じゃ、これ」
晋ちゃんが投げてよこしたのは、小さな紙。
アドレスと番号が書いてある。
「中谷の」
「ありがと」
そう言うと、晋ちゃんは部屋のなかに入っていった。
あたしは晋ちゃんのアドレスも、番号も知らない。
お隣だから、メールよりも窓越しで話すほうが楽だから?
何となくだけどあたしも教えないし、晋ちゃんも教えない。
あたしは携帯を開くと、電話帳を作成した。