★FAN★
何事もなく森は無事抜けられた。だが、一向に消えない背にかけられるどす黒い圧力。たまにくるゾクッという寒き感覚は、それが一瞬にして殺される記憶を刻むため、ばっと大袈裟に後ろに振り向く。


「二人とも走れ!!」



ヤンクスでも生きて帰ることが出来ないのか、二人にそう言うと、殺気から遠ざかるように、帝都に向かって走り出す。

リルとメイリンが走りだし、ある程度の距離を離れたとき、それは風とともにやってきた。赤い血まみれの光の刃が、リオンに目掛けて幾つも飛ぶ。

リオンは三人とともに逃げず、一番近くにいたために、それをうけきると、圧力に負けぬように、緋焔を強く握り、意志をもって固い姿勢でそこに立つ。



「馬鹿!何やってやがる、死ぬつもりか!?」

「死ぬ…つもりはない、先に行って待ってろ。俺は、俺のために戦う」


自分の強さに…、課せられた使命に…。

だが、その魔物と対峙しただけで、普通の魔物とは比べものにならない恐怖と重圧。

死神を模る赤き蝶。粉を振り撒きながら舞い降りる。

震える腕で握りしめる緋焔の火力は緊張からか、強弱激しく燃えて保てない。



(こんな恐怖…、一度強くなってからもう二度とないと思っていた。

だが、もう一度強くなりたいと願ったのだ。またそれ相応の恐怖に打ち勝たねば、得るものなどない!!)


激しく揺れていた焔は一定の火力に戻り、身体の震えは止まらないが、一つの決心がリオンの表情を変えた。


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