★FAN★
(鍵を開けるもの…、我が声に耳を傾けよ…。汝の詞は終わり無き焔『終焔』。さぁ…、命を燃やせ。焔となりて…)



覚醒したのか、髪は燃ゆる焔と同じ色に変化し、緋色の眼は何かを見据えて景色を映す。


「これが最高状態…、烈しいな」


これがあれば死の恐怖などない。俺は今、負ける気がしないからだ!!



―――ズババババ―――

(え…っ!?)


蝶の羽が赤く輝いた。その光は肩に脚に、貫通した痛みを伴い消える。今の攻撃に反応すら出来なかった。殺気がこの空間に充満しているために、攻撃の瞬間の殺気を感じることが出来ないのだ。

攻撃によろめくと、さらに追撃の光線が赤く輝く。

最高状態になれたのはよかった。新たな強さが手に入ったのだから。だがその力は今のレベルでは宝の持ち腐れ。


一点に集中した光線が、左肩を貫いた。その痛みは傷口を焼くように、もがき苦しむほどのものだった。呼吸が苦しく、力が一気に暴発する。












「放してヤンクス!リオン一人じゃ勝てないのわかってるでしょ!!」

「わかっている。だが、俺等の強さではどうにもならない!

皆が死ぬから、リオンは戦うと残った。その気持ちをわかってやれ」

「この歳で死ぬのはごめんだし。なんのために試験を受けに来たかわからなくなっちゃうわ」

「何それ!二人とも結局自分が良ければ構わないの!?

一緒に…、乗り越えるための仲間じゃない!!」



バシッとヤンクスの手を振りほどくと、元の道を走って戻り出す。リルの眼には少しながら涙で潤い、風で後方に流されていった。



「はぁ…、これだから仲間意識の強いのは組みたくないのよね」

「確かに…な。

だが、自分の目的が先走っていたのも原因の一つだ。互いにな」

「否定はしないわ、まだ死ねない理由ってものがあるわけだから、リオン…彼を残して逃げてきたわけだし」

「リル一人行かせるのも可哀相だ。俺らも行くぜ」


< 36 / 52 >

この作品をシェア

pagetop