★FAN★
力の暴走が止まらない。痛みを抑える気の意識が、力の抑制に回ることがなく、身体から大気に力が充満する。命が身体を崩壊させようとする痛みも、今の痛みに重なる。

この力を閉じる鍵が無い以上、溢れ出る力は無造作に放出する。


死神蝶は暴走する力に触れぬよう距離をとり、黒い魔法陣を描く魔術に精神を練り始めた。

動けない疲労と重たくなる身体の意識。目の前は朦朧と、死神蝶の詠唱の姿しか捕らえることができない。


‡ブラッディローズ‡



大地から成長する植物の蔦が、身体を縛り絡み、生命力を吸いて黒い花びらが大量に散った。


もう何も抑えられない。貫かれた肩からは抑えていた血が、急激に溢れ出し、暴発する力は失われた生命力により、次第に弱くなっていく。



‡リアライズ‡





苦しみが徐々に消えていく。失われた生命力は戻りはしないが、痛みが無くなったおかげで、暴走する力の抑制に意識をもっていける。


「リ…リル!戻ってきたのか!?」

「無茶したらダメじゃない。一人で出来ないこともあるんだから」

「だからっ…っぅ!」

「無駄にしゃべったら駄目よ。何でもいいから、あの魔物倒すよ!」



こっちの女は強いものだと思ったリオン。朦朧としていた目の映りは、彼女のおかげではっきり見えるようになった。



「必ず…倒す!反撃の時だ!!」


リオンは強く剣を握ると、死神蝶の赤き光を避け、懐に飛び込んだ。


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