悪魔ニ花束ヲ
こうして歩いていると、やっぱりこの男がどれだけ目立つのか思い知る。カップルの彼女は確実に灰原に視線を向けるし、振り返って見とれる場合も可、らしい。
まるで歩く天然記念物だ。違うか。

「全く桜咲いてないんだけど」

灰原が不機嫌に呟く。だから言っただろ。

「残念ですね。タイミングが悪いんですよ」

あたしの何の感情も込めない一言に灰原は、何故か少し笑う。優しい、笑みだ。意味が分からない。

「君はムカつく位変わらないね」

そのまま呟いた一言が、あたしには理解出来る筈もなく。

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