悪魔ニ花束ヲ
男前さんの名前は久城広大(くじょう こうだい)さんというらしい。多分二十代だと思うんだけど、男の人の年なんて正確に予想出来るスキルは持ってない。美形は特に、だ。あの黒い美形王子と違ってこちらの美形さんは男性的で、包容力のある感じが半端ない。大人の男の人ってかんじだな。
「……?なにかな?」
首を傾げる久城さん。凝視しすぎたらしくて恥ずかしい。
曖昧に笑って、あたしはそそくさと視線を曇った窓ガラスに向けた。
「着替えもあれば良かったけど、流石に若い子の着る服はないし、俺のは嫌だろ」
水分を含んだタオルを見て久城さんは苦笑してため息をつく。
「そんな、これ以上甘える訳にいきません、本当に感謝してますから」
寒い季節な訳じゃないしと慌てたあたしに、久城さんは、困ったように「でもなー」と微笑む。
「これ、すごく美味しいです。優しい味がします」
また謝ってくれそうだったから、その前にあたしは口に運んだカップを見つめてから久城さんを見上げた。
「さんきゅ、一応オリジナル」
嬉しそうに笑った久城さんの蕩けそうな笑顔に癒されて、何かこの人、天使だな、と思った。