月夜見ヴァーメイル
私だって頑張ればモテモテになる!……かもしれないんだからね!
からかってる様な涼くんの顔を睨み付けながら言えば、鼻で笑われた。
うぐっ!
もういいし!
涼くんなんて知らないから!
なんて下らないのだろう、そう思うが私は涼くんから顔を背け暫くの間無視を決め込んだ。
「ミカゲちゃん、」
すると鈴が鳴ったような可愛らしい声が私の耳に入ってきた。
声の聞こえた方を急いで見たら、やっぱり…これまた可愛らしい女の子が私を呼んでいた。
ピンクっぽい栗色のふわふわしている長い髪、小さな顔に白い肌、細い手足。
顔は困ったような眉にリスみたいな大きな目、ピンク色の小さい口に微かに色づく頬。
お姫様という言葉がここまで似合う子を私は知らない。
「あっ、桃華(モモカ)ちゃん!どしたの?」
「えっとね…あのね、担任の河西(カサイ)先生がね、ミカゲちゃんのことね、呼んでたの。」
「ああ、面倒くさいなぁ。桃華ちゃん教えてくれてありがとう」
「うんっ!」
笑いながらお礼を言うと、嬉しそうに微笑む桃華ちゃん。
……なにこの可愛い子。
名前にピッタリのこの女の子は、まさに学校のお姫様。
だけど一癖あり男が嫌いだという。
男に話しかけられるとたなぜか気絶してしまう場合が多い。
また高一の時、白雪姫の劇をやった際に白雪姫の役をやったことから、この学校では『白雪姫』とは彼女の呼び名となっている。
彼女にとっての毒リンゴは男、毒リンゴを食べたおかげで王子様とのキスができた、だから彼女の王子様はやってくる、とそう考えた新聞部がその記事を書き掲示した。
おかげで彼女を狙う男子が急増。
全く可笑しな考え方だと思う。
男が毒リンゴ?じゃあ、魔女は誰なの?って感じになっちゃうじゃん。
あっ。魔女は風紀委員の委員長か。
風紀委員の委員長と言えば、これまた有名だ。
生徒会長を狙っているらしく、性格は余りよろしくないらしい。
だから桃華ちゃんと生徒会長が仲良くやっているのを、よく他の男を使って邪魔しては桃華ちゃんを気絶させてる張本人。
……桃華ちゃんってさ、結構気絶してるけど絶対早死にするよ。
だって気絶って体や脳に悪いでしょ、多分。
「ミ、ミカゲちゃん?大丈夫?」
「えっ?あ、ああ。ごめんね桃華ちゃん」
危ない危ない、考え事がすぎた。
職員室に早く行かなきゃ。