月夜見ヴァーメイル
放課後、私は河西先生の言うとおりに可燃ゴミ、不燃ゴミの二つを手に持っていた。
ゴミを捨てた後、そのまま帰るつもりなのでリュックを背負っている。
御駈坂は基本自由なので、私は鞄ではなくリュックにしていた。
その方が両手が空くからいいじゃない?と思ってのことだ。
「…あのカッパめ、」
きっと面倒くさいから私に任せたんだろう。
もうすぐ夏休みになる前の最後のテスト、すなわち1学期期末テストの問題を作らなければならないからね。
もう、こっちだってその分試験勉強するっていうのに。
なに考えてるんだよ、あのカッパ。
「うっわ、相変わらずの汚なさ」
ゴミ捨て場に到着した私は、カラスが群がる程のゴミが散乱していることに顔をしかめた。
この前までは主事さが綺麗にしていたが、その主事さんが階段から落ちて入院。
それからは無法地帯と化している。
「わっ、ちょっ!」
私が持っているゴミを見たからか、カラスがいっせいに向かってきた。
思わず恐くてゴミを投げ捨ててしまった
ちょっと!どうしたの?!
カラスって普通逃げるでしょ!
なんで?!
だけどゴミを投げたはずなのに、カラスは私から目を離さない。
な、なんで?
どうして?
一歩、後ずさる。
恐い…。
――ピリリリリ
「ひっ?!」
スカートのポケットから聞こえてきたソレに情けない声がでる。
そんな私をカラスは首を右に左に傾げて見つめていた。
携帯め、空気を読めよ。
誰だ全く、こんなときに。
そろそろと携帯に手を持っていたらまだ携帯は震えているため通話ボタンを押して耳にへと持っていった。
「…も、もしもし?」
『ミカゲ?お母さんだけど、』
「お、お母さん?どうしたの?」
『あのね、お祖父ちゃんの部屋から変な紙を見つけたの』
「…変な紙?」
『そうなの。それが手紙でね、封筒なんだけど。貴女宛てなのよ』
「私宛て?」
『そう、この執筆はお祖父ちゃんのよ。だからきっと貴女へお祖父ちゃんからの手紙だわ』
「へー。でも、家に帰ってからでも良かったのに」
『ううん、もしかしたらって思って。お母さんの勘が働いちゃったのよ』
「…勘?」
『うん、そうなのよ。お母さんね、その貴女宛ての手紙読んじゃって、そしたらそこに…』
「えっ?」
お母さんの話の途中、私の視界の隅から黒い何かがコチラに向かってきたのが分かった。
それはもちろん、黒く立派な羽を羽ばたかせているカラス。
ちょっ、ちょっ、ちょっと!
お母さんの話もまだ聞けてないし、
「や、やだ!」
なんで?!
無意識に頭を下げて蹲る。
その時、チャリンと音をたてて鈴つきのお守りが落ちた。
「あっ!」
――バサバサ
お守りに手を伸ばしたその瞬間、目の前をまた横切った黒い影。
次に地面が見えた時、お守りはそこにはなかった。
『ミカゲ?!ミカゲ、どうしたの?大丈夫?!』
「…お母さん、ごめん。話しはまた後で」
私はお母さんとの電話を切り、立ち上がった。
「カァー」
黒い目のカラスが鳴いた。
私のお守りを取ったカラスは赤い目をしていた、ソイツはまだ私の頭上を飛んでいる。