初恋は雪のように溶けて

「じゃあそれだけだからそれだけだから!」

と言って、あの人はこの場を去ろうとする。

「…っあ、あの…!」

…え?

私は声をかけるつもりなんてなかったのに、なぜか声をかけてしまった。

えーと、えーと…どうしよう…あ…!

「あの、助けていただいたお礼をしたいのですが…!」

私がそう言うと、あの人はまた笑顔で

「そんなのいいよ、俺が助けたかったから助けただけだし」

「でも」

「白石さんが無事なら、それでいいんだよ」

…あ、また胸がドクンっていった。

初めての感覚で、何で胸がきゅーって苦しくなるのかはわからなかった。

でも、なんだか少し心地よかった。
< 23 / 29 >

この作品をシェア

pagetop