紅蓮の炎

「いくら警察とはいえ、
いや、警察だからか…。
南は危険だ。ある意味北より危ないかもしれねぇ」

「北よりも…?」

「あぁ。
南は治安は悪いがいい町だ。ただ、
ヤンチャな奴が多すぎる。それがシャレになんねぇんだ」


そこで一旦言葉を止め、伏せていた目を俺達に向ける


「言ってしまえば南の奴等全員が警察の事を敵対視してると思っていい。」


そう言って岩島は溜息をついた。


「全員が敵って…
そりゃすげーな」


いつの間にか克也が来ていて、
そう呟いた。


「まぁな。
だから行ったところで誰も協力してくれねぇよ
むしろ厄介事が増えるだけだ」


忌々しげにそう吐き捨てる岩島に克也と共についてきていた夏が不思議そうに尋ねる


「厄介事って…?」


その問いに岩島は総長をみた
総長は苦笑いを返す


「まだ何も言ってないんです」

「…ま、ちょこっとぐれー教えてあげてもいいんじゃねぇか?
今は時代が違う。パンサーがここに居るくらいだからな。」

「…そうですか?」

「あぁ。」


岩島は一応、初代龍神メンバーの副総長のポジションに居た。
因みにその時の総長は俺の親父だ

2人の言葉に俺、雄、克也、夏、そしてついさっきこちらによってきた瑠衣が頭を傾げる。
それに総長ではなく、岩島がこたえた。


「厄介事ってのは、“紅蓮”のことだ。」

「紅蓮…?」


耳覚えの無い言葉に夏が聞き返した。


「あぁ。
南のレディースだ」

「総長に忠実で、南町の安全を守る為にのみ造られた族だ。」


岩島に続き、そう後に言ったのは総長。
続けて副総長が付け足すように説明をしてくれた。


「南町で暴れようものならすぐ飛んでくる。あと、掟があるんだけど、
それが独特でね」

「そんな厳しいな掟なんですか?」


雄の問いに少し難しそうな顔をして副総長がこたえてくれた


「いや、掟自体はそんなに厳しいものでは無い。
ただ、他のものとは混じらないようにするというだけで」


それじゃ…


「それじゃあ、パンサーは…?」


その俺の問いに、副総長は総長を見やる。
総長は苦笑いをこぼし、


「パンサーと紅蓮は、別物だ」

「別物…」

「同んなじ南に居ても、何かが違う。
だからパンサーはここに居るんだろーよ」


そう言って締め括った岩島。
だが、


「どっちにしろ南はいけ好かねぇ
ノーヘルにスピード違反。
こっちとしては締め上げねぇと腹の虫が収まらねぇ」


そう言ってカリカリしながらも最後には教えてくれた。


「南町に警察が行けねぇような厄介事はな、
南が大の警察嫌いで、好戦的で、
紅蓮がえげつねぇぐれーに強いからだよ」


そう言って、「ちゃんと後片付けしろよ」と去って行った。

残った俺らは総長を仰ぎ見る。
その視線を受け、


「響にも言ったんだ。
お前らの代になったら、絶対言うからな」


そう言った総長に、俺は「はい」と言った。

それに続いてみんなも頷く。


「ありがとな」


優しく微笑む総長














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